東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻

森田研究室

~材料製造・循環工学研究室~

鉄鋼精錬

溶鉄中テルルの熱力学的性質の測定

テルルは太陽電池や熱電素子の材料として有名な元素ですが、快削鋼と呼ばれる被削性を高めた特殊鋼に加える合金元素としても古くから用いられていま す。製鋼プロセスにおいてテルルの濃度を精密に制御するためには、溶鉄中テルルの熱力学的性質を知ることが必要です。しかし、テルルの蒸気圧の高さからそ の測定は難しく、これまでほとんど研究されていませんでした。

そこで本研究では、テルルの蒸気圧の高さを積極的に利用した手法を開発し、溶 鉄中におけるテルルの熱力学的な安定性や、他の合金元素との相互作用などの測定を行いました。これらの結果から、例えば溶鉄からのテルルの蒸発速度に与える温度や他の合金元素濃度の影響などを定量的に議論することが可能になりました。

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アルミニウム希土類元素複合脱酸による介在物の熱力学的性質

鉄鋼精錬において溶鋼中の酸素濃度を抑えることは製品の各種特性を満たすために不可欠なプロセスとされています。現在アルミニウムなど酸素との親和力が高い元素を添加し、酸化物として浮上分離させることで鋼中の酸素濃度を下げていますが、残存した酸化物の一部が傷や欠陥となり、生産性を下げる要因となっております。希土類元素の添加により残存する酸化物を無害な形態に制御できる可能性があり、このプロセス設計の指針となる熱力学的性質の研究を行っています。

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製鋼スラグの凝固析出相に及ぼす冷却条件の影響

鉄鋼スラグの一種である製鋼スラグは、銑鉄やスクラップから鋼を製造する過程で年間約1500万トン発生し、大部分が埋立用の資材など土木・建築材料として用いられてきました。現在、製鋼スラグの鉄やリンといった含有成分を活かした、より付加価値の高い利用法が模索・研究されており、それに伴い製鋼スラグをそれらの新たな用途に用いやすい状態にするための研究も行われています。本研究では、容易かつ安価な処理による製鋼スラグ中成分の凝集・選別を目指し、冷却条件の制御による各種元素の濃縮・分離の可能性を調査しています。

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軽希土類金属を用いた溶鋼の脱硫および脱リン

リン(P)は鋼の機械的性質に様々な悪影響を与えるため、可能なかぎり低濃度であることが求められる不純物ですが、溶鋼の最終調整過程である二次精錬プロセスにおいてほとんど除去されません。セリウム(Ce)をはじめとする軽希土類元素は金属状態において強い還元力を持っているため、リンをリン化物へと変化させることによる二次精錬プロセスでの脱リンの可能性が示唆されています。また硫黄(S)については、現在でも二次精錬プロセスにおいて除去が行われておりますが、軽希土類元素を添加した際の挙動については不明な部分が多く残されております。このような背景から、二次精錬プロセスにおける軽希土類元素の脱硫・脱リン能を調査する基礎的な研究を行っています。

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