ケイ酸塩融体の熱伝導度測定
康榮祚 森田一樹
ケイ酸塩スラグは製鉄プロセスで広く使われている。特に連続鋳造時モールドフラックスには鋳型と溶鋼の間で熱を伝達し、最終製品の表面性質を決め るなど大変重要な役割がある。さらに、最近高炉スラグの再利用のために熱伝導度のような熱的や物理的なデータが必要になってくる。しかしながら、熱伝導度 の測定上の困難さで正確な熱伝導度値は現在不十分である。そこで、本研究では細線加熱法を用いてケイ酸塩融体の熱伝導度を測定することを目的とする。
細線加熱法は非定常測定方法として対流の影響が生じるまでの非常に短い時間で行われる。細線の小さい表面積からの輻射が無視されるため本測定法においては 熱伝達はほぼ熱伝導によると考えられる。試料の熱伝導度は次の式のように加熱線の発熱量と温度変化の間の関係から求められる。
・・・(1)
ここでQは加熱線の単位長さ当たりの発熱量である。結局、試料の熱伝導度はQ(電力)やΔTとln tのプロットの傾きから計算できる。実際の測定では図1のように融体試料に挿入した加熱線(Pt-13%Rh, φ0.15mm)に電力を供給しながら電圧変化を測る。時間の対数に関する連続的に測定された電圧変化の直線領域の傾きから(1)式。図2は上記のように ケイ酸Na2O-2SiO2融体の熱伝導度の測定結果を報告値と一緒に示している。他の報告値より正の偏倚があるが、温度上昇に伴って熱伝導度は減少して いる。それは高温になると微細構造の結合が弱くなるためであると考えられる。
今後は加熱細線法を用いて1400℃以上の高温で高炉スラグの熱伝導度を測定する。それにより、ケイ酸塩融体の熱物性と微細構造の関係に対して考察する。